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官公庁・独立行政法人のWebサイトリニューアル調達で、最初に確認したい7つのこと

2026.03.17

官公庁や独立行政法人のWebサイトリニューアルというと、「デザインを新しくする」「古くなったサイトを見やすくする」といったイメージを持たれがちです。もちろん、それも重要な目的のひとつです。しかし、実際の調達実務では、見た目の刷新だけでは済まない論点が数多くあります。利用者にとって使いやすい導線になっているか、職員が無理なく更新できる運用になっているか、アクセシビリティに配慮されているか、セキュリティ面に問題はないか。こうした点を事前に整理しないまま進めてしまうと、仕様書が曖昧になり、結果として「何を目的にした調達なのか」がぶれてしまいます。デジタル庁でも、ウェブアクセシビリティの継続的な確保や、上流工程からのセキュリティ実装の重要性を明確に示しています。つまり、Webサイトのリニューアル調達は、単なる制作会社選びではなく、情報設計・運用設計・調達設計の総合的な準備から始まるものだと考えるべきです。

なぜ「まず制作会社を探す」ではうまくいかないのか

Webサイトのリニューアルを急ぐあまり、最初に「どの会社に頼むか」から考えてしまうケースは少なくありません。しかし、発注側で目的や課題が整理されていない状態では、受注候補者から出てくる提案も比較しにくくなります。たとえば、ある事業者はデザイン改善を中心に提案し、別の事業者はCMSの更新性を重視し、さらに別の事業者はセキュリティやアクセシビリティを前面に出してくるかもしれません。どれも一見もっともらしく見えますが、発注側に評価軸がなければ、提案の良し悪しを適切に判断することができません。だからこそ、リニューアル調達では、まず制作会社を探すのではなく、「何を改善したいのか」「誰にとって使いやすくしたいのか」「公開後にどう運用したいのか」を明確にすることが先になります。

1.リニューアルの目的を明確にする

最初に確認したいのは、今回のリニューアルの目的です。ここが曖昧なままだと、仕様書の記載もぼやけてしまいます。たとえば、サイトを見やすくしたいのか、スマートフォン対応を進めたいのか、古いCMSを更新したいのか、問い合わせや申請の導線を改善したいのかで、必要な要件は大きく変わります。また、官公庁や独立行政法人のサイトでは、単なる広報ではなく、制度案内、申請受付、情報公開、災害時情報発信など、複数の役割を持っていることが多く、目的をひとつに絞れないこともあります。その場合でも、「今回の調達で優先して解決したい課題は何か」を整理することが大切です。リニューアルの目的が明確になれば、必要な機能、求める成果、評価基準も組み立てやすくなります。逆に言えば、目的が曖昧なまま進めると、完成後に「見た目はきれいになったが、使いにくさは残った」ということにもなりかねません。

2.現行サイトの課題を洗い出す

次に必要なのが、現行サイトの課題整理です。ここで重要なのは、「古く見えるから変えたい」という感覚的な話だけで終わらせないことです。実務では、どのページが見つけにくいのか、情報が重複していないか、PDFに依存しすぎていないか、スマートフォンから見たときに使いにくい箇所はないか、職員が更新しづらい仕組みになっていないか、といった具体的な論点に分解していく必要があります。可能であれば、アクセス解析、問い合わせ内容、庁内の更新担当者の声なども踏まえて、課題の根拠を整理しておくとよいでしょう。調達段階でこの整理ができていれば、単なる「全面改修」ではなく、「何を改善するための改修か」が見えやすくなります。課題整理は地味に見えますが、ここを丁寧に行うかどうかで、後の仕様書の質が大きく変わります。

3.アクセシビリティ要件を最初から入れる

官公庁や独立行政法人のWebサイトでは、アクセシビリティへの配慮は後付けでは済ませられない重要項目です。デジタル庁は、ウェブアクセシビリティの確保・維持・向上に継続的に取り組む方針を示し、JIS X 8341-3:2016を活用すること、対象範囲について適合レベルAA準拠を目標とすることを公表しています。また、導入ガイドブックでも、発注・受託に関わる担当者が、企画や設計の段階からアクセシビリティを意識する重要性を説明しています。つまり、アクセシビリティは公開直前に試験だけ実施すればよいものではなく、要件定義・設計・制作・運用の全体で考えるべきものです。具体的には、見出し構造、代替テキスト、キーボード操作、色のコントラスト、フォームのわかりやすさなどを初期要件に含めることが重要です。リニューアル後に「このページは読みにくい」「支援技術で使いにくい」といった問題が出ると、修正コストも大きくなります。最初から要件として組み込むことが、結果的には最も効率的です。

4.セキュリティを「公開サイトだから軽い」で済ませない

Webサイトは公開情報を載せるだけだから、基幹システムほど厳しく考えなくてよい、と見られることがあります。しかし実際には、CMSの管理画面、問い合わせフォーム、ファイルアップロード機能、アクセス権限、外部サービス連携など、公開サイトにも多くのセキュリティ論点があります。デジタル庁の「政府情報システムにおけるセキュリティ・バイ・デザインガイドライン」では、開発の上流工程から運用まで一貫してセキュリティ対策を実装する必要性が示されており、単に作った後で脆弱性診断を実施するだけでは不十分だという考え方が取られています。また、脆弱性診断導入ガイドラインでは、サーバ、ネットワーク機器、外部接続機器なども含めて診断対象を検討する必要があることが示されています。リニューアル調達では、ログイン管理、権限設計、委託先との役割分担、診断実施の有無、Cookieやアクセス解析の扱いなどを、事前に整理しておきたいところです。見た目の刷新ばかりに目が向くと、この部分が抜けやすいため注意が必要です。

5.CMSと運用体制を切り離さずに考える

リニューアルの検討では、「どのCMSを入れるか」が話題になりやすいのですが、本当に大事なのは、そのCMSを誰がどう使うかです。どれほど高機能なCMSを導入しても、庁内で更新できる人が限られていたり、承認フローが複雑すぎたりすると、結局更新が滞ってしまいます。逆に、シンプルなCMSでも、更新頻度や担当部署に合った運用設計ができていれば、実務上は十分機能します。とくに官公庁や独法では、複数部署が情報発信に関わることも多いため、誰が作成し、誰が確認し、誰が公開するのか、緊急時はどうするのか、といった運用面の設計が欠かせません。災害時や制度改正時など、迅速な更新が求められる場面もあるため、平時だけではなく、例外時の運用も考えておく必要があります。リニューアルは「作ること」よりも、「作った後に続けられること」のほうが重要です。その意味で、CMS選定と運用体制は一体で考えるべきです。

6.仕様書と評価基準はセットで考える

調達実務では、仕様書を細かく作り込んでも、評価基準が曖昧だと、結局どの事業者を選ぶべきかが判断しにくくなります。たとえば、アクセシビリティへの対応経験を重視したいのに、評価項目にその観点が入っていなければ、提案内容を適切に比較できません。CMS移行の実績、官公庁系サイトの運用支援経験、セキュリティ理解、公開後の保守体制など、何を重視したいのかを、仕様書だけでなく評価基準にも反映させる必要があります。価格競争が重要な場面もありますが、Webサイトリニューアルのように品質や運用性が重要な案件では、「価格だけでは測れない要素」が多く含まれます。発注側が求めるものを整理し、その内容を評価の仕組みに落とし込むことで、はじめて適切な受注者選定がしやすくなります。

7.スケジュールは“公開日”からではなく“準備工程”から逆算する

最後に見落とされやすいのが、スケジュールの考え方です。Webサイトのリニューアルは、単に制作期間を見積もればよいわけではありません。実際には、現状調査、要件整理、庁内調整、仕様書作成、公告、質問回答、審査、契約、設計、制作、テスト、移行、職員研修、公開後の初期対応まで、多くの工程があります。そこにアクセシビリティ確認やセキュリティ確認も加わります。デジタル庁のアクセシビリティ方針では、コンテンツ公開前の試験実施や確認の重要性も示されており、これを後工程に押し込むと日程が圧迫されやすくなります。公開予定日だけを先に決めてしまうと、準備工程が不足し、結果として質の確保が難しくなります。年度内公開などの制約がある場合こそ、前段の整理にどれだけ時間が必要かを丁寧に見積もることが大切です。

まとめ――リニューアル調達は「見た目」ではなく「設計」を整えることから始まる

官公庁・独立行政法人のWebサイトリニューアル調達では、デザインや制作会社選びだけに目を向けると、本来整理すべき論点を見落としやすくなります。最初に確認したいのは、リニューアルの目的、現行サイトの課題、アクセシビリティ、セキュリティ、CMSと運用体制、仕様書と評価基準、そしてスケジュールです。この7つを初期段階で整理しておくことで、仕様書の質が上がり、受注者選定もしやすくなります。特に公共性の高いサイトでは、誰にとっても使いやすく、継続して運用できることが重要です。リニューアル調達を成功させるためには、「どんなサイトを作るか」だけでなく、「どんな情報提供と運用を実現したいか」を最初に言語化することが欠かせません。Webサイトの改修は一度きりの制作ではなく、公開後も続く運用の起点です。だからこそ、最初の整理がその後の成果を左右するといえるでしょう。