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納期の遅延に伴う法的責任とは?― 不可抗力と自社都合の違いを正しく理解する ―

2026.02.24

官公庁案件や補助金関連業務、委託契約などにおいて、「納期」は極めて重要な要素です。とりわけ公共調達の分野では、契約書に明確な履行期限が定められており、その遅延は契約違反として扱われる可能性があります。

しかし実際には、すべての納期遅延が同じ法的責任を伴うわけではありません。

本記事では、納期遅延に伴う法的責任の基本構造と、「不可抗力」と「自社都合」の違い、そして実務上の注意点について整理します。

1. 納期遅延の基本的な法的考え方

契約において納期が定められている場合、その期限までに履行できなければ「債務不履行」に該当します。

民法上、債務不履行には主に以下の責任が生じ得ます。

・損害賠償責任

・契約解除

・遅延損害金の支払い

官公庁契約の場合、契約書や仕様書に「履行遅延に関する条項」が明記されていることが多く、遅延日数に応じた違約金が定められているケースもあります。

ただし、ここで重要なのは「遅延の原因」です。

2. 不可抗力とは何か

多くの契約書には、「不可抗力による遅延については責任を負わない」とする条項が設けられています。

では、不可抗力とは何でしょうか。

一般的に不可抗力とは、

当事者の責めに帰することができない事由であり、
通常の注意を尽くしても回避できない事象

を指します。

具体例としては以下のようなものが挙げられます。

・地震・台風・豪雨などの自然災害

・火災(当事者の過失がない場合)

・大規模停電

・戦争・暴動

・行政による突然の法令変更

・感染症拡大による行政措置

近年では、新型感染症による業務停止や物流停滞が不可抗力と判断された事例もあります。

ただし注意が必要なのは、「社会的に大きな出来事」であればすべて不可抗力になるわけではないという点です。

例えば、

・台風接近が予測可能だったのに事前対策を取っていなかった

・感染拡大が長期化しているのに業務体制を整備していなかった

といった場合、不可抗力と認められない可能性もあります。

3. 発注者側の事情による遅延

納期遅延の原因が発注者側にある場合もあります。

例えば、

・資料の支給が遅れた

・仕様変更が発生した

・確認・承認が予定より長引いた

このような場合、受注者側に損害賠償責任が発生することは通常ありません。

むしろ、契約上は納期の延長協議や変更契約の締結が行われることになります。

官公庁契約では「協議条項」が設けられていることが多く、やむを得ない事情が生じた場合には、双方協議の上で履行期限を変更できる仕組みが整えられています。

4. 自社都合による遅延のリスク

一方で、自社都合による納期遅延は、原則として法的責任を負う可能性が高くなります。

自社都合とは例えば、

・人員不足

・スケジュール管理ミス

・外注先の選定ミス

・機材トラブル(保守不足)

・作業量の見積り誤り

といったものです。

この場合、契約書に基づき、

・遅延損害金の支払い

・実際に発生した損害の賠償

・指名停止や評価低下

といった影響が生じ得ます。

特に官公庁案件では、履行実績が次回以降の入札参加や評価に影響するため、金銭的な問題以上に「信用」の問題となることが少なくありません。

5. 「不可抗力」と言えるかどうかの分かれ目

実務上の重要なポイントは、

本当に回避できなかったか
事前に合理的な対策を取っていたか

という点です。

例えば、

・バックアップ体制を整えていたか

・代替要員を確保していたか

・予備日を設けていたか

こうした体制が整っていれば、不可抗力と判断されやすくなります。

逆に、「想定していなかった」「対応が遅れた」という理由だけでは、自社の過失とみなされる可能性があります。

6. 中小企業が特に注意すべきこと

中小企業の場合、人員が限られているため、一人の不在が業務全体に影響することもあります。

しかし、法的には「人が少ない」という事情は原則として免責理由にはなりません。

だからこそ、

・業務分担の明確化

・進捗管理の徹底

・外注管理体制の整備

・余裕を持った工程設計

が重要になります。

また、遅延の可能性が生じた段階で、早期に発注者へ報告することも極めて重要です。

事前相談があった場合と、期限後に発覚した場合では、評価が大きく異なります。

7. 最も重要なのは「契約書の確認」

最後に強調したいのは、

すべては契約書に基づく

という点です。

契約書には通常、

・履行期限

・遅延時の措置

・違約金の計算方法

・不可抗力条項

・協議条項

が定められています。

案件ごとに内容は異なるため、

・一律に「不可抗力なら免責」

・一律に「遅れたら全額賠償」

とは限りません。

とくに官公庁案件では、仕様書・契約約款・入札説明書など、複数の文書を総合的に確認する必要があります。

まとめ

納期の遅延に伴う法的責任は、

・不可抗力か

・発注者事情か

・自社都合か

によって大きく異なります。

不可抗力であれば責任を負わないとされる場合が多い一方、自社の管理不足や見積り誤りによる遅延は、損害賠償責任を負う可能性があります。

中小企業にとって重要なのは、

・事前のリスク管理

・早期の報告と協議

・そして契約書の丁寧な確認

です。

納期は単なるスケジュールではなく、契約上の義務であり、企業の信用に直結する要素です。

トラブルを未然に防ぐためにも、契約締結時点で「不可抗力条項」と「遅延条項」を必ず確認し、実務体制を整えておくことが、結果として最も大きなリスク回避につながります。